アルメニア・アゼルバイジャンの軍事衝突激化
ロシアより南部にある南コーカサス地方にあるアゼルバイジャンとアルメニアが9月27日に軍事衝突を起こした。
今年は7月と8月も両国は軍事衝突を起こしている。これは両国にとっての係争地であるナゴルノカラバフを巡る紛争に端を発している。
今回の軍事衝突も同じ原因で起きているが、アルメニア政府が戒厳令と総動員令を発令する事態になり、大規模な戦争に発展する様相を見せている。
そもそも何故両国は争うのか?
それはアルメニアとアゼルバイジャンの間にはナゴルノカラバフと言う地域がある。
ここはアルメニア人が住む地域で、ソ連時代ではアゼルバイジャンの中にあるアルメニア人の自治州であった。
ソ連が崩壊する1991年にアルメニアとアゼルバイジャンが独立を果たすと、ナゴルノカラバフも独立する事を宣言
このナゴルノカラバフはアゼルバイジャンからの独立を意味した。アゼルバイジャンは国土を割るこの独立を認めない、ナゴルノカラバフは同じ民族であるアルメニアに帰属する事を望んだ。
それがナゴルノカラバフを巡り、アゼルバイジャンとアルメニア両国の対立を招き、紛争に発展した。
1994年に停戦となり、ナゴルノカラバフはナゴルノ・カラバフ共和国としての存立を続ける事が出来ている。(ただし、この国を承認する国家はほぼ無きに等しい)
ナゴルノ・カラバフ共和国として独立したとはいえ、経済的・軍事的にもアルメニアに依存する事からアルメニアの保護国と言うのが実態である。
そんなナゴルノカラバフはアゼルバイジャンとアルメニアの火種としては残り続け、近年では両国の軍事衝突が何度も起きていた。
〇両国の軍事力
陸軍 現役兵力4万5850人
戦車110両
空軍 Su-25攻撃機14機
Mi₋24戦闘ヘリ15機
陸軍 現役兵力5万6480人
戦車320両
空軍Mig-29戦闘機13機
Su-24戦闘攻撃機11機
Su-25攻撃機11機
(笠倉出版「これが世界の陸軍力だ!」竹内修著・「これが世界の空軍力だ!」柿谷哲也著より)※出版された2014年の数値
どちらもロシア製の兵器を装備している。
戦力の優位がどちらかにあるかと言えば、兵力の多いアゼルバイジャンだろう。
空軍戦力で攻撃機と戦闘ヘリが主戦力のアルメニア軍に対して戦闘機を有するアゼルバイジャン軍、予備役にしても30万人の動員が可能ともされている。
アゼルバイジャンの数的優位がアルメニア政府が総動員令を出す必要を生じさせたのかもしれない。
〇戦争の目的
今回の軍事衝突が係争地ナゴルノカラバフを巡る争いだとしても、どこまで戦い続けるのか?
アルメニアにとってはアゼルバイジャン軍を撃退すれば、ナゴルノカラバフを保持し続ける目的を果たせるだろう。
アゼルバイジャンはナゴルノカラバフを編入できるように占領できれば目的を果たす事になるかもしれない。
アゼルバイジャンが目的を果たすには早期にナゴルノカラバフ全域を占領する必要がある。もしも長期化(三日以降ないし一週間後)すればロシアやトルコが介入して強制的な停戦がありえるからだ。
どのような停戦にせよ、戦闘による死傷者が多く出る事は避けられない。
もしもアゼルバイジャンがナゴルノカラバフを編入できる結果になっても、ナゴルノカラバフのアルメニア人住民の反発は避けられない。
流血の事態が治まるのは難しいだろう。