マサカズ雑記帳

ミリタリーやアニメなどについて思った事や行った所について書いていきます。

【ネタバレあり】劇場版SHIROBAKO感想

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映画館で貰えた特典

 10月10日に広島バルト11にて再上映版を見ました。

 本来なら2月末の上映開始時に見たかったのですが、新型コロナウイルスの感染者が広島県でも確認された時期に重なり劇場で見るのを見送っていた作品でした。

 それだけに再上映と言う形で上映されるのはありがたかったですね。

 

〇4年後の武蔵野アニメーション

 本作の舞台は製作していたテレビアニメ「第三飛行少女隊」を作り終えて感動のラストで終わったテレビ版から4年後の武蔵野アニメーション

 ビルは草に覆われ、かつてのスタッフの多くが居ない寂しい姿になっていた。

 主人公の宮森あおいは夜の社内で並べたイスの上で毛布に包まり寝ている。実家からの電話でもゴールデンウィークには帰れないと答えて多忙な身であると分かる。

 とはいえ武蔵野アニメーションは他社製作のアニメの仕事を請け負うのがやっとの状況だった。

 あの「第三飛行少女隊」も他社元請で続編が作られていた。だが、内容は戦闘機での空戦がメインの作品がお色気がメインの作品になってしまっていた。

 なんとも冴えない状況になっている武蔵野アニメーション

 そうなったのはテレビ版の後で次作の製作をしていたが、権利問題の発生で製作中止になった。その事で丸川が社長を辞め、他のスタッフも武蔵野アニメーションを離れると言う事件が起きていたのだ。

 武蔵野アニメーションはナベPこと渡辺が社長で、製作の宮森とで維持されている状態だった。

 (こんな状態のせいか渡辺は社内にあまり居たくないと言う感情を持ってしまう)

 

 この寂しさが冒頭でこれでもかと描かれている。

 テレビ版第1話を彷彿とさせる車が並ぶシーンも、ただ街中を走るシーンになっている。そこからの挿入歌である「仕方ないのでやれやれ」が流れてのオープニング

 灯りこそ点々としているけど、夜の暗さが際立つ街の様子に挿入歌の歌詞が社会人の辛さ満載で不穏さを見る側に感じさせる。

 そこからの草に覆われた会社のビル、椅子の上で寝る宮森、他社が作って変えられた自社の作品、居なくなったかつてのメンバーと言う連打が続く

 更に絵麻・しずか・美沙・みどりと居酒屋で呑む場面、居酒屋に入る前に及び腰になってしまう宮森、気を取り直する様子は宮森がどれだけメンタルが弱くなっているか垣間見られるし、親友の前でも気を張る彼女が哀れになって来る。

 宮森は退社してカレー店を営む丸川の所を訪れる。カレーを食しながら泣く場面

 丸川の前だからこそ見せられる弱さが彼女の無理を重ねている心情を物語る。

 序盤はまさに宮森の置かれた辛い状況が描かれている。

 

〇劇場用アニメを1年以内に作れ!

 どん底武蔵野アニメーションだったが、渡辺は宮森に元請製作の企画を見せます。

 それは「空中強襲揚陸艦SIVA」と言うタイトル

 しかも劇場作品で公開が2020年2月(この場面は2019年2月)と無理な企画です。しかもタイトル以外ほぼ何も決まっていないゼロスタートに等しい状況

 そこから必要なスタッフを揃えるとして、かつての武蔵野アニメーションのメンバーが戻って来るのは序盤の暗い状況からの変化で気分がアガります。

 タイトル以外何も無い「SIVA」ですが、あの権利関係で製作中止になった作品のキャラクターや設定を使う事で製作期間の短縮を図ります。

 この製作中止でお蔵入りの作品が別作品として蘇る。これは燃える展開だ。

 順調に製作が進むかと思いきや、「SIVA」の製作を武蔵野アニメーションに丸投げした会社である「げーぺーうー」(元ネタはKGBの前身組織だろう)から物言いが入ります。

 タイトルがそのままなので「げーぺーうー」に「SIVA」の権利があると言うのです。

 宮森は興津がくれた着物を着て「げーぺーうー」へ直談判に向かう。

 ここで本作のゲストキャラと言える宮井楓も着物を着込んで助太刀をする。こういう展開好きだねえ。

 ここで時代劇風の場面でのアクションが心象風景として出る。テレビ版の木下監督がカーウボーイの格好で乗り込む場面を思い出させて面白い。

 「げーぺーうー」社長と契約内容についての話し合いをする宮森と宮井、この辺りは「半沢直樹」のような感じで逆転するので痛快だ。

 権利問題をクリアして、作品のダビングまで漕ぎ着けた武蔵野アニメーション

 しかし、木下監督は出来に満足では無い様子

 ラストの場面が何か足りないと言う。

 宮森も満足とは思えず、自らスタッフたちの前でラストの作り直しを提案して実行する事となります。

 公開まで3週間のギリギリの時期での作り直しをしますが、完成させて公開日に間に合って幕を下ろします。

 尺の問題で入れられなかったんだと思うけど、最後の3週間どうやっていたのかの描写が欲しかったなあ。

 最後の最後で作り直しを求める宮森

 これまで製作過程の管理を行う立場だった宮森が、プロデューサーとして作品の中身に意見を反映させた瞬間だ。

 「SIVA」の製作で宮森はプロデューサーになっています。これまでの作る現場の管理者から創作にも関われる立場にランクアップしているのを見せる場面だったのかもしれません。

 宮森のどん底からの再生からの復活に進歩を描いたストーリーでもありましたね。

 

〇社会人だからこそ楽しめる

 「SHIROBAKO」はP.A.WORKSのお仕事アニメ作品の一つで、組織や集団での働く大人達がより濃く描かれた作品だと思います。

 この劇場版でもオーバーワークで精神を削る宮森、後輩への仕事の指導で悩む美沙、声優よりもタレント業にシフトしつつある事に悩むしずか、相手先との交渉に難渋する葛城が描かれている。

 社会人として何年も経過している人達には響く内容じゃないかと思う。

 とはいえ、間で挟まれる心情風景のミュージカルやアクションで評価が分かれるかもしれない。再上映版の特別映像では宮森役の木村珠莉さんが「水島監督がやりたかった事」としてミュージカル場面が作られたと語られている。

 妙にメルヘンちっくなミュージカル場面だが、これは「SIVA」の無茶な企画がスタートした直後に宮森が覚悟を決める場面として登場する。

 多忙と重責で心身をやられている宮森が自力で決起するのだから妙にハイであり、メルヘンであるのは宮森の脳内・心中の世界であるからだろう。

 そう考えると愉快な場面は悲哀に見える。

 武蔵野アニメーション再結成と作品完成までのカタルシスがある一方で、今の社会人に共通する悩みが描かれている。社会人こそが楽しめる作品だと言えます。

 

〇キャラクターのあれこれ

 作中では安原絵麻と久乃木愛が同居して暮らしている様子が描かれている。

 絵麻がアニメの仕事をして、愛が家事をしている。そのせいか住まいの様子は豊かで綺麗なものに見える。絵麻も愛との同居で孤独から脱している様子が微笑ましい。

 大きな成長をしたとキャラクターは今井みどりだろう。

 シナリオライターである舞茸しめじに見い出され、アニメの脚本家として活動するみどり。「SIVA」の脚本を書くのに煮詰まる舞茸に助言をして脚本を完成させた場面で、舞茸がみどりに「これからは商売敵だ」と言う場面はみどりを一人前と認めた良い場面だ。

 ゴスロリ様こと小笠原綸子が自分のジャージ姿を宮森に見られて恥ずかしがる場面が面白かったり、個人的には興津由佳が活躍する場面が欲しかったなあ。

 

 テレビ版から好きな作品でもあったので、今回の劇場版はファンとしては満足できる内容でした。