「この世界の片隅に」は何度でも味わえる
映画「この世界の片隅に」が公開から1カ月近くが経とうとしている。公開4週目で4万人以上を動員し6億円の興行収入を記録しヒット作として間違いない実績を伸ばしている。この実績から最初の63館の公開から190館にも拡大している。
公開前から本作を待ち望んでいたファンとしては嬉しい展開です。
〇自然と笑いが出る
母親に頬をつねられるすずやすずのハゲている部分に墨を塗りたがる晴美にすずと周作の仲睦まじさに泣く径子など観客の多くから笑い声が出た。
今まで劇場で見た作品が偏っているけど観客が揃って何度も笑う作品をそんなに見た事は無い。見に行った3カ所の劇場ではどこも笑い声が多く聞かれた。
3回観ても笑える部分はどれも和やかに笑えます。
戦時中なのでミリオタの視線では描かれている戦闘機や艦艇に炸裂する砲弾の種類やB-29が機雷を投下している描写や空襲の時系列などに視線が移る。
B-29による機雷投下からF-13による最後の出撃前の戦艦「大和」を撮影する場面に円太郎から「雪隠詰めにされて出たところをやられた」と語る戦艦「大和」の最期がさりげなく描かれている。
そんな部分が説明無しで描かれている。
なので1回見ただけでは見過ごす部分は多い。服装でも3回目にして上着に貼られた名札を読んで径子さんが29歳なんだと分かった。また、すずと周作の結婚式では小林の叔父が袴に紐か帯を巻いているのを見つけたり見る度に発見できる映画なのです。
(旧海軍時代では下士官集会所だった青山クラブ、作中ではここですずと周作が呉の街へでかける場面で登場する)
〇実在する街だからこそ盛り上がる
こうした情景は登場人物が地名を言うのと合わせて高齢の観客が熱心に見入るのが3館どこでも垣間見れた。小声で「あそこのあれが」と語りながら見ている様子が周囲より聞こえたものです。
30代の私としては新たな発見であるものの、当時を生きていた、または昭和前期の名残を知る人には懐かしさをかなり感じるものであるようです。
青山クラブやすずが何度もその前を通る蔵のような建物である旧澤原家住宅もとい三ツ倉などはまだそのままの形なので場面が思い出せるでしょう。
〇すずさんの生き様に魅せられる
「この世界の片隅に」の主人公であるすずは「ぼんやり」した性格で作中では笑いを誘う事を何度もします。そんな彼女は可愛らしいと萌えたりします。
しかし主婦がぼんやりばかりしていられない。厳しい義理の姉である径子に叱られたり家事に追われたりでストレスを抱える。
その上に戦争による悲劇がすずを苦しめます。
「ぼんやり」マイペースなすずが本質は変わる事無く妻として大人となる様が見られるのも本作の魅力だ。
新しい環境で居場所に迷う人にはすずの姿は観る人によっては共感するかもしれないと個人的には思う。
以上が3回観た私が「この世界の片隅に」お勧めする魅力です。
この記事を読んで「この世界の片隅に」を見に行こう、また見ようと思って頂ければ幸いです。