マサカズ雑記帳

ミリタリーやアニメなどについて思った事や行った所について書いていきます。

「この世界の片隅に」は何度でも味わえる

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 映画「この世界の片隅に」が公開から1カ月近くが経とうとしている。公開4週目で4万人以上を動員し6億円の興行収入を記録しヒット作として間違いない実績を伸ばしている。この実績から最初の63館の公開から190館にも拡大している。
 公開前から本作を待ち望んでいたファンとしては嬉しい展開です。
 私はTジョイ東広島・広島市八丁座・呉ポポロの三カ所で合わせて3回観ました。その3回の鑑賞から「この世界の片隅に」の魅力を語ります。

〇自然と笑いが出る
 この世界の片隅に」は笑える作品だ。すずさんがドジをやったりボケをかましたり他の登場人物も笑える事をやってくる。唐突でストレートな笑いではなく和やかなギャグである。
 母親に頬をつねられるすずやすずのハゲている部分に墨を塗りたがる晴美にすずと周作の仲睦まじさに泣く径子など観客の多くから笑い声が出た。
 今まで劇場で見た作品が偏っているけど観客が揃って何度も笑う作品をそんなに見た事は無い。見に行った3カ所の劇場ではどこも笑い声が多く聞かれた。
 3回観ても笑える部分はどれも和やかに笑えます。


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(福屋八丁堀本店東館にある映画館八丁座が「この世界の片隅に」の垂れ幕で宣伝している。この東館の隣が作中に登場する福屋八丁堀本店本館がある)

〇見る度に発見できる 
この世界の片隅に」は情報量が多い。
 片渕監督が6年間も集めた当時の資料によって再現された戦時中や終戦直後の呉市広島市の情景や当時の生活ぶりは細かく作られている。
 戦時中なのでミリオタの視線では描かれている戦闘機や艦艇に炸裂する砲弾の種類やB-29が機雷を投下している描写や空襲の時系列などに視線が移る。
 晴美が「戦艦ばかりで航空母艦がおらんね」と言うと出た日付によってマリアナ沖海戦で負けた後だと分かる。
 B-29による機雷投下からF-13による最後の出撃前の戦艦「大和」を撮影する場面に円太郎から「雪隠詰めにされて出たところをやられた」と語る戦艦「大和」の最期がさりげなく描かれている。
 そんな部分が説明無しで描かれている。
 なので1回見ただけでは見過ごす部分は多い。服装でも3回目にして上着に貼られた名札を読んで径子さんが29歳なんだと分かった。また、すずと周作の結婚式では小林の叔父が袴に紐か帯を巻いているのを見つけたり見る度に発見できる映画なのです。
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(旧海軍時代では下士官集会所だった青山クラブ、作中ではここですずと周作が呉の街へでかける場面で登場する)

〇実在する街だからこそ盛り上がる
 この世界の片隅に」は呉市広島市を舞台としている。片渕監督によるロケハンもあって当時の町並みが忠実に再現されている。
 こうした情景は登場人物が地名を言うのと合わせて高齢の観客が熱心に見入るのが3館どこでも垣間見れた。小声で「あそこのあれが」と語りながら見ている様子が周囲より聞こえたものです。
 30代の私としては新たな発見であるものの、当時を生きていた、または昭和前期の名残を知る人には懐かしさをかなり感じるものであるようです。
 呉を護衛艦見学などで何度も来ている私としては下士官集会所(現:青山クラブ)や入船山の辺りは「お~あそこだ!」と感動できたりします。地元の呉や広島の住民に広島県人はより作品世界に没頭できます。
 また他県や呉市広島市をよく知らない人でも精巧な描写と今の風景を比較する聖地巡礼でかなり楽しめます。
 青山クラブやすずが何度もその前を通る蔵のような建物である旧澤原家住宅もとい三ツ倉などはまだそのままの形なので場面が思い出せるでしょう。

〇すずさんの生き様に魅せられる
 この世界の片隅に」の主人公であるすずは「ぼんやり」した性格で作中では笑いを誘う事を何度もします。そんな彼女は可愛らしいと萌えたりします。
 しかし主婦がぼんやりばかりしていられない。厳しい義理の姉である径子に叱られたり家事に追われたりでストレスを抱える。
 その上に戦争による悲劇がすずを苦しめます。
 「ぼんやり」マイペースなすずが本質は変わる事無く妻として大人となる様が見られるのも本作の魅力だ。
 新しい環境で居場所に迷う人にはすずの姿は観る人によっては共感するかもしれないと個人的には思う。
 
 以上が3回観た私が「この世界の片隅に」お勧めする魅力です。
 この記事を読んで「この世界の片隅に」を見に行こう、また見ようと思って頂ければ幸いです。