自衛隊の駆けつけ警護閣議決定~自衛隊は南スーダンで何ができる?~
(10月に岩手県の演習場で公開された駆けつけ警護の訓練、国連の関係者を救出すると言う想定の場面)
部隊の名称が南スーダン派遣施設隊である。施設とは施設科と言う自衛隊独自の職種(兵科)の名称で他国軍では工兵と呼ばれるものだ。施設科は河に橋をかけたり深く掘る陣地を構築したり土木や建築の工事ができる能力を持っている。
その施設科による派遣部隊は南スーダンで道路整備や排水溝整備など土木工事の任務をしている。
それに対して戦闘部隊と呼べるのは警備小隊と言う規模の小さな部隊だ。任務は派遣部隊の宿営地や外で任務中の施設部隊を警護する事だ。
〇駆けつけ警護が起きる状況とは?
果たして南スーダンで自衛隊が駆けつけ警護任務をする時があるかとすれば可能性は低い。南スーダンのPKOに参加している各国軍の部隊には戦闘部隊である歩兵部隊を派遣しているところもある。まず駆けつけ警護をする事態になった場合は中国軍やインド軍・ネパール軍・ケニア軍などの歩兵部隊がまず出動する。
自衛隊が現状の警備小隊のみしか戦闘部隊がおらず、戦闘部隊の規模を増やさない場合で駆けつけ警護の任務が発生するのは宿営地のすぐ近くで保護を求められた場合だけだろう。
宿営地の警備を空にして駆けつける事は無理だからだ。
(ブッシュマスター装甲車)
〇南スーダンで駆けつけ警護をするのに必要な戦力とは?
まず主体となるのは歩兵である普通科である。これを120人の中隊で必要だ。30人の小隊で3個あり1小隊が常に即応態勢で待機させる。(もう30人は本部小隊)
その普通科部隊を装甲車である軽装甲機動車と96式装輪装甲車に日本版ハンヴィーと言える高機動車やトラックで運ぶ。駆けつけ警護の危険地帯へ行くのだから全車輌を装甲車にするべきだが自衛隊には十分な数が無い。(各部隊の装甲車輌を集めればできるが)車列の先頭と最後尾に装甲車輌を配置するようにするしかない。
ここまでの戦力とするのは現状の自衛隊派遣部隊の武装と戦力では自動小銃や携帯式対戦車ロケット弾に機関銃載せたピックアップトラックなど豊富な武器を持つ武装勢力には力不足だからだ。ましてや戦車や火砲を持つ政府軍には尚更である。
駆けつけ警護で民間人を救出するにあたり護送する車輌でうってつけなのが自衛隊が昨年から配備しているオーストラリア製ブッシュマスター装輪装甲車だ。8人を乗せられ(運転手以外なら9人乗せられる)100km/hで走れて地雷の炸裂にも耐えられる。
ブッシュマスターの導入が海外の邦人を自衛隊で陸上輸送する為なのだから尚有効な車輌だ。現在ブッシュマスターは4両あるので30人以上を輸送できる。
理想としては30ミリ機関砲を装備した装甲車である87式偵察警戒車や戦車に対抗できる105ミリ砲装備の16式機動戦闘車もあればいい。
それらの戦闘車輌は戦車や歩兵戦闘車のような装甲車輌にピックアップトラックに機関銃や無反動砲を積んで戦闘車輌にしたものと遭遇しても対抗できるからだ。
戦闘だけではなく見せて手を出させないようにする意味でもだ。
自衛隊が駆けつけ警護を行うのが現実化するのは現状より戦闘部隊を増強してからとなる。そうでないなら可能性は低い。