ロシア大使殺害でトルコとロシアの今後は?
トルコでロシア大使のアンドレ・カラコフ氏が非番の警察官であるトルコ人により殺害される事件が起きた。ロシアのプーチン大統領はトルコへ怒りをぶつける事は無くロシアとトルコの関係悪化を狙ったものだと冷静な対応をした。
しかし非番とはいえ現職の警察官が大使を殺害した今回の事件はただの過激派によるテロとは異なるものだ。
この大使殺害がどんな影響を与えるか悪い展開になった場合で検証したい。
〇原因となったアレッポ陥落
犯人のメヴルット・メルト・アルトゥンタシュは大使を殺害した時に「アレッポを忘れるなシリアを忘れるな」と叫んだとされる。
シリア政府軍がアレッポを制圧できたのはロシア軍が政府軍を助ける形で参戦したからだ。ロシア空軍による爆撃に装備品の供与や地上戦にロシア兵が参加していたりと政府軍のてこ入れにロシアは大いに力を発揮した。
反政府軍からするとロシアが参戦したせいで劣勢なのだという見方ができる。
〇ロシア軍のトルコ展開
プーチン大統領は大使の殺害事件でトルコを責めてはいなかったが同様にトルコ国内でロシア要人や在留のロシア人がテロにより殺害される事件がまた起きればロシア政府がトルコ国内にロシア軍の展開許可を求める可能性がある。
大使館やロシア政府関係者の訪問をロシア軍で警護すると言い出すかもしれない。当面はSPの警備要員が増えるだけだがトルコの警官や軍人など公的機関の人間がまたロシア人へテロを起こせばさすがにロシア政府はトルコの治安当局を信用できなくなる。
トルコはNATOの加盟国でありロシア軍がトルコの同盟軍として駐屯するのは難しいが大使館警備やロシア人保護を名目に一時的な展開はありえる。
〇トルコが米露の新たな対立の火種に?
トルコには南部に米軍のインジルク基地がある。クーデター未遂事件の後で一時はトルコから基地への電力供給が止まり基地が閉鎖されかけたが米軍は今もトルコに有る。
もしもトルコでまたロシア人や大使館がトルコ人警官や軍人により攻撃された場合はロシアによる一時的な報復がありえる。その報復からトルコを巡り米露が対立する事も考えられる。何よりNATO加盟国のトルコがロシアから攻撃を受けた場合は米軍やNATO加盟国の軍隊が義務によりロシア軍と交戦する可能性も高くなる。
〇エルドアン政権を叩くテロの発生
今回の現職警官によるロシア大使殺害はロシアへの抗議に見せてエルドアン政権へのテロではないかと思う。
7月のクーデター以後、エルドアン政権は軍人のみならず警官や教師などの公職の人達を逮捕するなど粛清し報道規制を以前よりも強化した。そうした抑圧的な政策をするエルドアン政権を外圧により揺さぶろうと狙うテロの可能性もありえる。
外国の大使を守れず殺されてしまうのは国家にとっては不名誉な事でありエルドアン政権での統治に疑問視を国際社会に与える事になる。ましてや警官となれば政府の意志で殺害したのかと疑われる。
エルドアン政権へ直接攻撃できない為に外国人を殺傷し外圧による打撃を目論むテロが続く可能性がある。
最悪の場合を想定しての今後予想ですがトルコもロシアも対立を望んでいないのでよほどの事態が起きないと両国関係が大きく悪化する事は当面ないと思う。