マサカズ雑記帳

ミリタリーやアニメなどについて思った事や行った所について書いていきます。

アニメ「幼女戦記」第1話軍事考察(1)

 第1次世界大戦のような世界観で描かれる「幼女戦記
 アニメ第1話で出た参謀本部での会話について推測と解説してみます。
 ちなみに原作は未読なので原作と違うかもしれません。
 
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〇レルゲン
「本国では戦略予備すら欠いております」

 帝国軍参謀本部でのルーデンドルフ(作戦参謀次長)ゼートゥーア(戦務参謀次長)レルゲン(作戦参謀次官)の三人による会議の様子
 ここで帝国は四正面で戦争し戦略予備兵力が無いほどカツカツなジリ貧状態と書かれている。ここで言う戦略予備とは軍団や師団単位で数える予備兵力の事だ。兵士の数で言えば何万人単位である。
 もしもどこかの戦線で敵が大兵力で突破しても万単位の戦略予備があれば開いた大穴を防ぐ事はできる。また逆に双方が激戦で消耗している時に無傷の戦略予備があれば反撃の戦力として使い戦略的な状況を変える事も可能だ。
 そんな戦略予備が無い帝国はどこかの戦線が崩れてしまうと防げない危機的状況である。
 そこで帝国軍は他の戦線から兵力を回す事になった。
 
〇ゼートゥーア
「そこで予備兵力を掻き集めておいた」
 ここでゼートゥーアが言う予備兵力は方面軍や軍団のレベルでのものだ。これは現場の司令官に預けるもので戦術レベルで投入される。何千人単位で戦線の穴埋めが目的だろう。
 
〇レルゲン
「船腹と鉄道のダイヤの調整もありますので再配置に二週間ほど必要かと」
 これは軍隊の大移動は船舶と鉄道であると語っている。
 陸で軍隊が移動する手段は現代でこそトラックなどの自動車にヘリコプターや輸送機などの航空機と手段は様々あるが第一次世界大戦のような世界だと徒歩か鉄道しかない。
 第一次世界大戦の史実ではようやく自動車の大量生産が始まった事もありトラックによる兵員輸送も始まった。またフランス軍がパリからタクシーで兵士を運んだ事もやっていた。だが部隊全てをではなく導入が始まったばかりである。
 「幼女戦記」の世界に自動車がどの程度普及しているのか不明だが軍隊の長距離移動では鉄道が使われているのは確実だ。船舶による海上輸送と鉄道の移動は乗せ換えや船舶や列車の確保など運行スケジュールを組むのは大変である。
 そこで引き抜きの部隊が来るまで時間が必要であると言う意味の台詞になっている。
 
「せめて限定動員にとどめておけば」
 帝国は共和国が軍の動員をしている事を否定し戦略方針を間違えた。
 つまり何をルーデンドルフは怒っているのかと言うと帝国軍の上層部は共和国が戦争に対しての積極性を見誤った事に怒っているのだ。
 では?限定動員とは何か?
 そもそも動員とは軍隊を出動できるようにする準備段階を指す。戦時動員となれば招集をかけ徴兵検査に合格している者や予備役の兵士を集めて部隊の定員を完全にしてから前線へ出動となる。この動員の動きは召集をする時に一般社会から人や物を集めるのだから他国に知れる。
 なので動員が始まると周辺諸国は緊張状態になり対抗して動員する場合もある。帝国が共和国への判断を間違えたの訳は共和国は対抗手段としての守りの動員であると見誤ったのかもしれない。
 今度は限定動員とは何か?おそらく総力を動員するのではなく限られた戦力を動員して周辺国への刺激を弱めるべきだったと言っていると思われる。ルーデンドルフは共和国が組する協商連合への軍事行動すら否定しているので共和国と開戦する事も誤りと見ているようだ。

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〇ゼートゥーア
「もはやプラン315は機能していない。遅滞防御で間に合わない以上機動防御に移行するしかなかろう」
 精鋭部隊を各地に転戦させて敵を撃退する計画であるプラン315は戦略予備が無い帝国では増援を求める前線に兵力が引き抜かれて機能しなくなった。
 そこでゼートゥーアは遅滞防御では間に合わないと言う。遅滞防御とは守りつつ後ろに下がるのだが「遅滞」の言葉通り敵の進撃を遅らせる。
 遅滞防御とは時間稼ぎの為に少しづつ下がる戦術だ。だがこれが間に合わないのは兵力不足により急場が凌げなくなっている事を指す。
 第一次大戦と同じような戦線の組み方だと隙間なく繋がる部隊配置だから兵力はより多く必要だ。前線を繋げる兵力すら危ういので「間に合わない」と言う判断をしたのだ。
 そこで機動防御に変更すると言う。機動防御とは前線突破する敵を叩くもので前線に陣地を連ねて敵を阻止するのではなく敵の動きによって部隊を向ける方針に切り替えたのだ。

 この参謀本部の場面だけでも舞台となる帝国の窮状がよく分かるところです。