海自最大の護衛艦「かが」呉基地配備の意義とは
海上自衛隊の護衛艦では最大級の大きさである「いずも」型の二番艦「かが」が呉基地に到着した。
「かが」は大きいだけではなくヘリコプター搭載護衛艦であり司令部機能と輸送能力を持つ多機能艦です。そんな護衛艦が呉に配備されどうなるのか考察します。
護衛艦「かが」の能力
満排水量19000トンで全長248mの大きさは海上自衛隊の艦艇では最も大きい。
イージス艦の「こんごう」型や汎用護衛艦の「たかなみ」型は満排水量が6000トンから9000トンで全長は150mから160mの大きさを比べると「かが」が他の護衛艦よりもいかに大きいか分かるだろう。
そんな大きい護衛艦はどんな能力があるのか?
「かが」の外見的な特徴は長さ245mで幅35mあるヘリコプター甲板だ。まさに空母のような容姿を形作るヘリコプター甲板には同時に5機のヘリコプターを発進する事ができる。搭載できるヘリコプターは14機だ。
「かが」より前に配備されたヘリコプター搭載護衛艦の「ひゅうが」型では搭載できるヘリコプターは11機であり「かが」は「ひゅうが」型よりも飛行甲板が1.5倍に大きくなっている。
「かが」が乗せられるのはヘリコプターだけではない。
人員400人と大型トラック50台を運ぶ能力がある。戦車を乗せられる構造ではないが「おおすみ」型輸送艦に匹敵する輸送能力である。
また他の艦へ燃料の洋上補給ができ、医療設備も整い35床のベッドがある。
更に司令部機能が整っている。艦隊旗艦としての司令部と陸海空自衛隊の部隊をまとめた統合任務部隊の司令部が別個で設置できる部屋が備えられている。
ヘリコプターの母艦であり、輸送艦であり、補給艦であり、司令部でもあり、病院船にもなれる。「かが」は大きな艦に様々な機能を盛り込んだ多機能艦なのです。
呉にある「かが」による作戦とは?
呉基地には平成23年(2011年)からヘリコプター搭載護衛艦の「ひゅうが」型二番艦である「いせ」が第4護衛隊群第4護衛隊の所属として配備されている。
「いせ」はヘリコプター母艦であり司令部機能を持つ護衛艦ではあるものの「かが」のような多機能艦ではありません。
海上自衛隊は護衛隊群の編成として1個護衛隊群ごとに1隻のヘリコプター搭載護衛艦を置く方針なので「かが」が呉に到着すると「いせ」は佐世保の第2護衛隊群第2護衛隊へ配属が変わる。
しかしその意味合いは以前より異なる。
「かが」が多機能艦である。特に司令部能力と補給能力は呉の第4護衛隊群第4護衛隊に与えられた意味を変えるかもしれない。
南西諸島で有事が起き佐世保と呉の護衛艦隊が出撃する場合を想定してみます。
佐世保の第2護衛隊群第2護衛隊は「いせ」に対潜哨戒ヘリや護衛隊群司令部を乗せて出撃します。
第2護衛隊は南西諸島沖で敵潜水艦の捜索や撃退に制海権の確保を行います。
呉からは南西諸島有事の前線部隊を統括指揮する統合任務部隊の司令部を乗せた「かが」が第4護衛隊群第4護衛隊と共に出撃する。
「かが」に乗った統合任務部隊司令官が第2護衛隊を含めて指揮を開始する。
「かが」も対潜哨戒ヘリを乗せて第4護衛隊周辺の対潜哨戒を行いつつ「いせ」にヘリを送り損耗の補充やパイロットの休養による交代ができると思われる。
艦隊戦闘を考えると「いせ」の第2護衛隊は前線で戦い、「かが」の第4護衛隊が後方支援にあたるようになると思われる。
「かが」が島嶼奪還任務の中核に?
呉基地は「おおすみ」型輸送艦3隻を揃えた輸送艦部隊が配備されている。
そこにヘリコプター母艦であり司令部機能と輸送能力を備えた「かが」が加わる事で島嶼部が占拠されて奪還する作戦を行う際の大きな戦力となる。
輸送艦と「かが」の艦内に陸上自衛隊の奪還部隊を乗せる。また「かが」にUH-60JやCH-47Jなどの輸送ヘリやAH-64D戦闘ヘリを乗せて空からの奪還作戦が行えるようにもする。
そうした奪還部隊を「かが」の艦内に置いた統合任務部隊か陸自部隊の司令部から指揮するのである。
負傷者が出た場合も「かが」の医療設備が役立つ。
「かが」が島嶼奪還作戦の中核となった場合は第4護衛隊群第4護衛隊と第1輸送隊の統合部隊が組まれると思われる。
(呉基地にて左が「かが」で右が「いせ」である。この2隻が同時に見れるのは今だけだ)
「かが」の呉基地配備は呉の第4護衛隊が司令部部隊または支援部隊となり南西諸島など対中国に備える佐世保の第2護衛隊や第5護衛隊が前に出て海域を守る前線部隊として立つようになる。
これは対北朝鮮に備える舞鶴の「ひゅうが」がある第3護衛隊が日本海で前線に立ち横須賀の「いずも」がある第1護衛隊が司令部部隊または支援部隊として機能すると言う役割になるかもしれない。
「かが」の呉配備は脅威に対しての海自護衛艦部隊の役割が定まったと言えるかもしれない。