マサカズ雑記帳

ミリタリーやアニメなどについて思った事や行った所について書いていきます。

アニメ「幼女戦記」第9話軍事考察

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ターニャ

ボナパルトアウステルリッツかあるいはカンネーにおけるハンニバルと言う訳か」

 ターニャが帝国軍がこれから行う戦略を例えたものだ。

 ボナパルトはフランス皇帝のナポレオン・ボナパルトの事だ。

 ナポレオンが戦ったアウステルリッツ会戦は1805年にロシア軍とオーストリア軍の連合軍8万以上に7万のフランス軍が勝った戦いだ。

 ハンニバルカルタゴの将軍であるハンニバル・バルカの事だ。

 このハンニバルを有名にしたのが紀元前216年のカンネーの戦いだ。(カンナエの戦いとも呼ばれる)

 この戦いでハンニバルは5万のカルタゴ軍で7万または8万のローマ帝国の軍隊を打ち破ります。

 どの戦いも共通するのがまずナポレオンもハンニバルも敵から攻めさせている事です。

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(作中に出たアウステルリッツ会戦の絵画を元に描かれた絵)

 

 ナポレオンはわざと自軍右翼の配置を薄くして重要な地点であるブラウツェン高地すら放棄して敵を右翼へ攻める様に誘った。

 ハンニバルはローマ軍が重装歩兵を押し立てて真正面から突き進むのを見越して中央の歩兵全隊がローマ軍の攻撃に直面しないように弓なりの配置にした。

 敵から攻めさせる作戦によりナポレオンは隙間ができた戦場の中央に打って出てロシア・オーストリアの連合軍を包囲して撃滅できる勝機を掴んだ。

 ハンニバルはローマ軍をどんどん自軍の中へ攻めさせて三方を囲む包囲の輪の中に入れる事に成功しローマ軍を殲滅した。

 ターニャが挙げた2つの例はこの後で帝国軍が展開する共和国軍への戦略の中身と同じなのです。

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ウーガ 

「後退を悟らせない殿軍にされるらしい」

 攻めるよりも難しいとされるのが敵前での後退や撤退です。

 敵が後退するのを察知した場合は追撃されるからです。敵に背中を見せている時に攻撃されるのはマズイからだ。反撃できないからだ。

 そこで殿が必要になる。

 後退や退却する部隊を守るのが殿だ。下がる味方とは逆に敵に向き追撃を食い止める。

どれだけ難しいかと言えば殿は簡単に倒されてはならないし、不利だからと後退がそうそうできない。

作戦行動によっては下がる味方部隊に合わせて殿の部隊も後退できますが基本はそう簡単に後退はできません。支援が無い場合もあり危険な役目なのです。

有名なものでは羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が浅井軍と朝倉軍の追撃から織田信長の本隊を守る為に殿を務めた金ヶ崎の戦い1570年)があります。

 秀吉の殿による守り(明智光秀も参加していたと言われる)で織田軍本隊はほぼ損害無しで退却を成功させ窮地を脱します。


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ゼートゥアー 

「敵の城に攻め行って城下の誓いを結ばせると言った戦前のドクトリンは実現性が乏し過ぎます」

 戦争の終着点についてゼートゥアーが言う場面です。

 ここで今までのやり方を否定している。敵国の首都へ攻め入り降伏または休戦させると言う戦争の終わらせ方はできないと言っているのです。

 それはライン戦線で機関銃や火砲による強力な火力が歩兵主体である陸上部隊の前進を阻んでいるからです。そこへ魔導士部隊の機動力と火力が更に陸上部隊の前進を余計に阻む。

 共和国の首都へ前進は不可能になっている。

 そこで帝国軍が選ぶべき方針をゼートゥアーは示します。


「できるだけ多くの敵兵を叩き戦争継続能力を粉砕する。それが戦争集結への唯一の道です」


 これは第3話でターニャが軍大学でゼートゥアーと面会した時に言った考えそのものだ。

 敵首都の制圧を目指すのではなく、敵国の軍隊自体を叩き大損害を与えて戦争を続けられないようにすると言うターニャ発案の戦略をゼートゥアーは帝国軍の戦略として引き上げた形になりました。

 これは「敵野戦軍の撃滅」とも呼ばれます。第一次世界大戦第二次世界大戦の時期に出た戦略ではなくナポレオン戦争の頃から戦争の勝敗を決める決戦での目標を敵野戦軍、すなわち敵国の軍隊を壊滅させると言う意味です。

 敵国が戦う為の駒が無ければ戦争ができなくさせるのを狙ったのが「敵野戦軍撃滅」なのです。