アニメ「幼女戦記」第8話軍事考察(2)
ターニャ
「なるほど我々は行くも地獄、退くも地獄という訳ですか」
「我々の敵はあくまで共和国軍なのですね」
「まあ民間人が居れば制約になりますが」
ロワール市が武装蜂起した市民により占拠され西部方面軍司令部で奪還作戦をターニャは命じられます。
この時の会話はターニャからトゲが含まれた言葉が出ます。
トゲの原因は市民、つまり非戦闘員である民間人が戦場にある事です。
戦闘に加わらない無防備な市民を帝国軍が殺傷してしまった場合は帝国軍が虐殺行為をしてしまったと言われる事でしょう。
意図的にではなく流れ弾での殺傷でも敵国にとっては復讐心からの戦意を煽る格好の材料になります。また虐殺を行った悪い国家となってしまっては貿易をしている中立国が帝国との貿易を停止する可能性もあります。
でもターニャにとって一番の気がかりは自分が市民虐殺を指揮した悪名が軍歴に残りキャリアの汚点となる事でしょう。
なので「我々の敵はあくまで共和国軍なのですね」と念押しで聞いたのです。
西部方面軍司令官
「軍人になどなるものではないな」
欺瞞に近いやり方で市民殺傷の可能性がある作戦を命じる心境であると思われる。
ターニャ
「我らは市内の共和国軍を全て排除しなければならない。当然ではあるが非戦闘員への発砲は厳しく禁じる。ただし市街戦につき物的破損については破壊許可が出ている」
大隊にロワール市奪還作戦を説明するターニャの説明
目的はあくまでロワール市を占拠する共和国軍の排除と捕らわれている帝国市民もといロワール市に駐屯していた帝国軍兵士の救出である。
だが市民が住む都市での戦闘は戦場で市民との遭遇は避けられない。
なので非戦闘員への発砲を禁じているのだ。
一方で「物的破損については破壊許可が出ている」とも説明している。これは建物に籠もっている敵を攻撃する時に建物を壊してしまっても構わないとする意味である。
敵が居るとはいえ民間の施設を攻撃するのを躊躇させない為だろう。
ターニャ
「掃討戦に移行する」
ロワール市での作戦は共和国軍を一掃する掃討戦を行う方針と決まります。
掃討戦とは何か?
簡単に言うと主な敵を倒してから残る敵を片づける戦いである。
その残る敵が退却か降伏をすれば良いけれど抵抗を続けている場合は攻撃して倒さねばならない。
攻撃側にとっては終わりが見えない頭の痛い作戦となる。
グランツ
「だいたい民兵と非戦闘員の区別など不可能です」
ヴァイスもこの点から「市民への誤射」を心配していて「それ以上言うなと」止めたのです。
ターニャ
「奴らの狙いは時間稼ぎだ」
ロワール市には共和国軍の魔導1個中隊が居ますが帝国軍の占領地のど真ん中に居るのです。
共和国軍としては時間を稼ぎ空挺での増援を受けるか前線を突破した友軍との合流を望むしか無いからです。
都市への砲撃
第8話ではロワール市に対する砲撃について驚く反応を見せています。
これは都市に対する攻撃が国際法により禁じられているからかもしれない。
現実の世界では1907年ハーグ条約第二款「戦闘」での第22条で「交戦者は害敵手段の選択につき、無制限の権利を有するものではない」と定めています。
つまり敵を攻撃する手段は何でもやっていい良い訳じゃないと言う意味です。その前提で第25条では
「防守されていない都市、集落、住宅または建物は、いかなる手段によってもこれを攻撃または砲撃する事はできない」
とあります。戦闘への備えをしていない無防備な都市などへの攻撃を禁じています。
第27条では更に都市へ攻撃する場合(第25条での防守されている都市にあたる場合)は文化財の建物や病院は軍事的に使用されていない場合は攻撃を控え、捕虜収容所はよく分かる識別をせよとある。
実際に戦争に関わる国際法でここまで決められています。守られているのが少ないですが。
ではロワール市攻撃はどう実行されたか。
民兵ではない一般市民の犠牲を出さない為という建前で市民への避難勧告を行いターニャも共和国軍魔導士との戦いが一段落つくと改めて勧告を行いました。
軍隊や民兵が居て陣地が作られている都市に建前でも非戦闘員を戦闘に巻き込まない配慮をする。
ターニャが考えたとされる新解釈による都市攻撃の論法は戦う構えを見せている都市から非戦闘員の市民を避難させた上で(建前だけでも)攻撃を行うと言うものです。
勧告に従わず都市に残る市民は帝国軍と敵対する軍隊の兵士や協力者という事にして市民の犠牲者が出たとしても勧告を無視したのが悪いとなります。
なんだか悪しき考えのように見えますが、空からの爆撃機による戦略爆撃が始まると市民を逃がすではなく、軍需工場の労働者になる市民を殺傷するのも作戦の内になってしまいます。幼女戦記の世界はまだ無差別大量殺戮が行われる総力戦が行われる前なのです。