北朝鮮空軍の実力とは?
(航空ショーで離陸する北朝鮮空軍のMig-21戦闘機、古い戦闘機だがブルガリア空軍やイエメン空軍などでも現役だ。しかしF-15やF-16にステルス戦闘機のF-22とも対峙する空軍としては古過ぎると言える)
二日連続の航空ショーを開催した北朝鮮
戦闘機であるMig‐29やMig‐21に攻撃機のSu‐25が飛び回る盛大なものである。戦闘機の燃料になるジェット燃料が国連決議による制裁で北朝鮮が入手できない筈だがそんな制裁が無いかのように航空ショーでは戦闘機や輸送機やヘリコプターなど様々な機体が飛行した。
では北朝鮮の空軍力とはどれほどのものだろうか?
しかしその数の中身は多くが古く旧式な機体ばかりだ。
北朝鮮空軍で他国の戦闘機と戦える機体は16機しかないMig‐29だけだ。Mig‐1よりは新しい世代の戦闘機であるMig‐23が46機あるものの1967年に初飛行したこの戦闘機では韓国空軍のF-5戦闘機ぐらいしか相手にできないだろう。
燃料不足により訓練の数が減り航空自衛隊のパイロットが年間200時間飛んでいるのに対して北朝鮮は10年間で350時間(1996年に韓国へ亡命した北朝鮮軍パイロット李哲秀大尉の証言)だと言われる。年間で35時間では米軍や韓国軍のパイロットとは比べものにならない。
戦闘機以外ではロシア空軍でも現役であるSu‐25攻撃機が35機ありIl‐28爆撃機が50機、Mi‐24攻撃ヘリが20機と対地攻撃能力を有するが維持が大変な大型機であるせいかIl‐28が飛行している姿は確認されていない。今回の航空ショーに登場したSu‐25は稼働状態にある。Mi‐24は稼働状態にあるかどうか確認できる情報が無いので北朝鮮空軍の対地攻撃能力はSu‐25か輸送ヘリのMi‐8にロケット弾を発射できる装置を装備した機体ぐらいかもしれない。
(航空ショーでのMig-29戦闘機、北朝鮮空軍の華と言える機体だが改修しておらず陳腐化してしまっている)
それは北朝鮮空軍では一番新しい戦闘機であるMig-29が陳腐化させてしまっている。ロシアではMig-29はMやSMTなど派生型を作り現在ではエンジンとシステムをアップグレードして航続距離を伸ばしたMig-29Kが開発されインドへ売り込んでいる。
古いままの機体に訓練不足のパイロットでは航空ショーや軍事パレードを飾るだけしかできないのが実力ではないだろうか。
そんな北朝鮮空軍が行える作戦行動には限りがある。
2003年に起きた米空軍のRC‐135電子偵察機にMig‐29とMig‐23が異常接近する事態が起きた。今後はこの時のような領空に近づく米軍や韓国軍の航空機へ北朝鮮軍戦闘機が示威行動をするぐらいだろう。
(MD500観測ヘリコプター、アメリカのヒューズ・ヘリコプター社の製品だが北朝鮮は西ドイツの企業から80機購入した。韓国軍も同じヘリを使用している為に韓国政府は怒りアメリカ議会も問題視した。この為にヘリの売買に関わった2社が貿易権限を剥奪された)
(航空ショーで離陸するAn-2小型輸送機、1947年に初飛行した複葉輸送機は小型で低速飛行できる機体である為に北朝鮮特殊部隊が空から韓国へ侵入する為の機体とも言われている)
それかAn‐2小型輸送機やMD500観測ヘリコプターで特殊部隊を運ぶ特殊任務をするぐらいかもしれないが、そのAn-2とMD500は連絡・輸送の仕事を主にしていて以前から言われる空からの侵入を行う任務を現在北朝鮮軍ができると考えているか怪しい部分もある。
北朝鮮の空軍力は機体は防空のみならず対地攻撃能力を有するもパイロットの腕と燃料備蓄がどれほどかで自国の防空も他国への攻撃も満足にできるか怪しいと言える。だが空軍にしろ地上軍や海軍と言った正規軍の装備が大きな変化が無いのは核兵器と弾道ミサイルの開発に力を注いでいる証拠でもある。
核兵器と弾道ミサイルの2点とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の開発により海軍はSLBMが発射できる潜水艦で核兵器に関わっているが空軍はHl‐28など何かの機体に核爆弾を搭載する事は無く(核兵器を向ける対象がアメリカなので爆撃機が飛んで行っては韓国空軍や在韓・在日の米軍基地から出撃する米軍機にすぐ捕捉され撃墜されるだろうからだ)現状のまま維持されると思われる。
北朝鮮空軍が新しい戦闘機なり既存の機体に新しい装備を付けるような改修ができるようになるのは北朝鮮の核兵器開発がひと段落(核兵器と弾道ミサイルが実用化の域に達した時点)して軍事費を核兵器と弾道ミサイル以外に使用できる時かもしれない。だがそれが近い将来とは言えず北朝鮮空軍の苦しい事情は当分続くだろう。
(上がIL-76輸送機で下がMi-8輸送ヘリ